
こんにちは。こども台所仕事研究家の石井由紀子です。
前回と今回の2回に渡って、子どもが安心して台所仕事に取り組める環境づくりについてお伝えしています。→(前回)こどもの台所仕事を叶える環境づくりから得られるものとは?
今回はこちら、実践編です。
まず最初に、お母さんが子どもにしてもらいたいことを書き出してみましょう。
「子どもが台所でしてくれたらうれしいと思うことは何ですか?」
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今回は、2歳半のお子さまを持つご家庭にご協力いただいて実践しました。
今回のママがしてもらいたいことは、
(自分のお茶碗やお箸、コップを棚から出してテーブルに並べる)
(自分が使ったものを自分で洗って棚に片付ける)
(お手伝いをしたがったら)
●お茶をいれる
●ごはんをよそう
●きゅうりで一品つくる
子どもに扱って欲しいものは、子どもの手の届く場所に置く
子どもが扱える(管理できる)量しか置かない
取り出しやすい置き方を心掛ける
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ダイニングテーブルに近く、子どもの手も届くこの場所を「子どもたち専用の食器置き場」に。
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「子どもたち専用の食器置き場」には子どもたちが日々使うものだけを最小限に絞って置く。
棚の中には全部でこれだけ入っていました!
お手伝いしてもらうお子さま2人が使う
● お茶碗(各1×2)
● コップ(各1×2)
家族5人で使う
● 小皿(5枚)
● カトラリー(5人分)
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奥から取り出すのは難しいので、前後させて置くのではなく、一列に並べる。また、なるべく重ねず、間隔も広めに配置。
慣れてくれば、家族みんなの配膳も手伝ってくれるようになるので、そちらも分かりやすく数を減らして配置しました。
シンクで作業できるよう高さを調整する
子どもサイズの道具(スポンジ・洗剤・ふきん)を用意し、定位置に置く
完了できる量を見極める(自分が使ったものだけ)
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作業をするには、手元を上から見下ろせる高さが必要。シンクが一般的な高さの場合、身長140㎝程度の人の目線まで上げる必要がある。また、ステップは躯体のしっかりとした安定したものを選ぶこと。
従来のステップの高さは約25㎝。
平均的な2歳児からすると身長110㎝程度の人の目線しか確保できていません。
シンクの高さは一般的に85〜90㎝。
2歳児の身長80〜90㎝に対して、50㎝程度の安定したステップを選びましょう。
左の写真は高すぎるようにも見えますが、蛇口まで手を伸ばすことを考えるとこれくらいが最適です。
IKEAのステップがおすすめ!
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食器洗いと片付けに必要な道具
●スポンジ
●台所用洗剤
●ふきん
を、子どもサイズのもので揃える。
「スポンジ」「台所用洗剤」はシンク周りの一番手の届きやすい場所を、「ふきん」はお手伝いセット(※次項目で解説)の中を定位置に。
洗剤が無くなるまでポンプを押し続ける子も多いので無駄にならないよう
水で薄めて、量も少な目に。
子ども専用の「台所用洗剤」や「スポンジ」は、大人のものとは分けて、
シンクの手前=「子どもが使いやすい場所」を定位置にしましょう。
「洗う→拭く→しまう」までの一連の作業ができるように、
子どもの洗い物の量は少な目がおすすめです。
「ふきん」も専用のものを用意して定位置を決め、大人が使うものとは分けて配置してください。(お手伝いセット※内に配置しておくと良い)
※お手伝いセットについては次項目で解説
今回の場合はシンクの向かいに「子どもたち専用の食器置き場」があるので、お片付けもスムーズです。
高さ50㎝程度のステップは作業台としても活躍します。
お手伝いセット(子どもサイズ)を用意する
お手伝いセットの置き場(定位置)を決める
高さや広さを考慮し、作業台を用意する
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※お手伝いセットの参考例。
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子どもが管理できる量は限られているので、あちらこちらに置かれた多くの道具の中から自分が使うべきものを選ぶのは困難。
子どもが使うものだけを厳選して1箇所にまとめて入れておきましょう。
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作業台は子どものおへその高さが目安。安定した台を目の届く場所に設置しましょう。
危険のないよう、ルールを伝える。(包丁や火の扱い方)
危険な時以外、手を出さない。こぼしても、モタモタしても見守る姿勢を忘れずに!(失敗から学ぶことも多い)
はじめての作業の場合は、最初にゆっくり説明して、やって見せる。
子どもにとっての適量を見極める。
今回チャレンジするその他のお手伝いは、
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1ℓや2ℓのポットやボトルは重過ぎて子どもには作業が難しいです。軽くて操作しやすい大きさのものに移し替えておきましょう。
また、注ぐことに慣れてきたら、500㎖のペットボトルに移しておいて冷蔵庫の下の方にストックしておくと、「冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ」までの一連の作業ができるようになります。
失敗から学ぶことは多いです。
「こぼしたら拭く」ことも一緒に覚えてもらいましょう。
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最初からたくさんのごはんを見ると、やる気をなくしたり、遊びになってしまうことも。適量を見極めて、まずはお茶碗一杯分から。
ごはんがくっつかないようしゃもじは濡らしておきましょう。
※しゃもじでごはんをよそうのが難しい場合は、すくいやすいスプーンで試してください。
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適量はきゅうり一本分くらい。
それ以上だと、やる気をなくしてしまうかもしれないので、注意しましょう。
選び方・注意は前回のブログをご覧ください。
包丁の使い方を説明した後、お母さんが一度やってみせましょう。
はじめて包丁を使う時は、以下のことをゆっくり丁寧に説明してあげてください。
※ 包丁は2歳半くらいから使えます。くれぐれも上記のことをしっかり理解させてから使うようにしてください。また、包丁に限っては子ども専用のものでも、保管はお母さんが行ってください。
塩をつまんで振りかけるのは子どもには意外と難しい作業です。やってみせてください。
親指と人差し指でつまむことを説明し、ゆびをこすり合わせながら全てのきゅうりに振りかける様子を見せましょう。子どもは全体ではなく、一箇所に盛ることがありますが「それもよし!」の気持ちで見守ります。
いかがでしたか?
本当にこんなに出来るんだ-!と驚きの気持ちで読み進めた方もいらっしゃることでしょう。
小さい子どもたちはいつも「大人がやっていること」をじーっとみています。そうしながら「いつかは、あれを自分でもやれるようになるぞ!」と思っています。やれるように環境を整えてやらせてみると、目的の定まらない単なる遊びではなく、ご飯をよそって、お茶を運んで、水を入れて、こぼれたらふく、という日常の営みを真摯にやろうとする姿が現れます。そうすると、自分で自分のことができるようになり、自分がやったことが人の役に立つことを知って、もっと進んで、次へ次へと、子どもは喜びながら自立への道を歩いていきます。
「やる!」という気持ちがある時、子どもは大きく成長しようとしています。「子どもがやりたがっていることは何かな?」「自分が子どもにやって欲しいことは何かな?」リストアップからスタートして、実践してみませんか?
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子どもの台所仕事研究家。 モンテッソーリの教育理論をベースに 台所仕事から子どもの自立をつくる教室 「こどもキッチン」を主宰している。
こどもキッチン http://blog.kodomo-kitchen.com/
****** これまでの ******
子どもの台所仕事研究家 presents
第3話「なぜ良いの?どんな風に良いの?絵本が子どもに与える3つの嬉しいこと」
第5話「こどもの台所仕事を叶える環境づくりから得られるものとは?」
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