
こんにちは。こども台所仕事研究家の石井由紀子です。
以前に第2話で、1歳半からできる「おにぎりづくり」をご紹介しました。今回と次回で、おうちの台所環境を子どもの料理や台所仕事を可能になるようにするためのヒントをご紹介します。
子どもが歩けるようになると、子どもが台所に入ってこないようにキッチンにゲートつけるご家庭もあるかと思います。
「<安全>のためにしている」とお思いの方も多くいらっしゃるかも知れません。
うんうん。そうですよね。お気持ち分かります。
そして今、目の前の子どもが2歳としましょう。
もしも台所に入ることのないままに大きくなり、10年後、12歳。中学一年生になりました。20年後、22歳、社会人になりました。さてその子は、一体どうなっているでしょうか?
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ガスコンロに変わるIHのコンロが登場し四半世紀が過ぎて今。
赤ちゃんだった人は25歳になっています。そして、生まれた時からガス火を「みる」機会すらなかった彼らの中には「火を見るのも恐い」いう人が現われはじめています。
ろうそくの火を見ることすらできないのであれば、バースデーケーキはさみしくなっちゃうかも知れません。
また、学校の調理実習では、計量スプーンにしょうゆをうまく注げない高校生がいます。
油で揚げる時、遠くから投げ入れるように具材を入れようとする中学生がいます。
包丁の刃が切れるという感覚がなくて、調理実習の洗い物の時に刃を上に向けたまま洗って流血事件となる短大生がいます。
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「ほんとかな?」と疑いたくなるような、ちょっと昔ならわざわざ学校で教えられなくても身についていたはずのことを難しく感じる子どもたちが増えているようです。
この背景には、幼少期からの「日常生活の体験」が極端に少なくなりすぎている、ということもあるかも知れません。
人類は火や刃物をはじめ、道具を自分で使うことによって、他の動物とは一線を画す存在として進化してきました。
そして、「体験が欠如する」ということは、その人の人生の幅を狭めるにつながり兼ねないのかも知れない。だとしたら、本当に残念でしかたありません。
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掃除、洗濯も、多くのことが全自動の便利な生活になったからこそ今、私たちには「台所」を子どもの育つ場所に、環境を整えて変えていき、子どもたちにご飯づくりや片づけの一端を担ってもらえるようにすることから得られるものの大きさは、計り知れないなって感じています。
小さい子どもは、子どもが台所をはじめ、家事全般に自然と強烈に興味を持ちます。お母さんやお父さんのマネをしたがります。
そして、この爆発的な興味は2歳~3歳ごろからはじまり、やがて少なくなっていく期間限定のものなのです。
次回は「何から始めたらいいのかしら?まったく見当もつかないわ」という方のためのヒントとして、実践型ワークショップを紹介します。
2歳半の女の子のおうちキッチンでのビフォーアフター。
キッチンの環境を整える実践型ワークショップでどんな変化があったのか。全てが大人仕様である台所を、子どもが安全に、喜んで使えるようになるための工夫を、実践編としてご紹介いたします。お楽しみに!
子どもの台所仕事研究家。 モンテッソーリの教育理論をベースに 台所仕事から子どもの自立をつくる教室 「こどもキッチン」を主宰している。
こどもキッチン http://blog.kodomo-kitchen.com/
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子どもの台所仕事研究家 presents
第3話「なぜ良いの?どんな風に良いの?絵本が子どもに与える3つの嬉しいこと」
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