
1 「6月6日は梅の日」
店先に並ぶ青梅(おうめ)が、さわやかに薫る季節です。
梅は、バラ科サクラ亜科サクラ属スモモ亜科に属し、「花よし、香りよし、果実よし」と三拍子そろった花木。さまざまな品種があり、実の採取が目的である「実梅(みうめ)」は約100種、花の観賞が目的の「花梅(はなうめ)」は約300種もあるそうです。
寒風の中、桃や桜に先駆けて一番にほころぶ姿は、同じく寒さに耐える松や竹とともに、おめでたい縁起物「松竹梅」としても有名ですね。
和歌や俳句の世界では、「花」といえば主に「桜」をさしますが、昔は「梅」が主流だったそうです。奈良時代、7世紀後半~8世紀後半に編纂された日本最古の和歌集「万葉集」には、桜が読まれている歌が約40首に対して、梅は約120首。春の訪れを告げる花として古くから親しまれていたことがうかがえます。
梅干しが、書物に登場するのは平安時代。手当てとしての最古の記録は、村上天皇(むらかみてんのう)(在位946年~967年)の病が、梅干しと昆布の茶で回復したというものだそう。その後戦国時代には、武士の携行食として、保存食、水の殺菌、傷の消毒などに重宝され、江戸時代以降には一般市民にも広まり、食にかかせないものとなりました。
梅干し、梅酢、梅シロップなどを作る『梅仕事(うめしごと)』は、この季節ならではの風物詩といえるでしょう。
2 梅干しの効能「一日ひとつで医者いらず」
青い梅の種には、青酸配糖体が含まれ、大量に食べると中毒を起こす恐れがあると警告されています。しかし、黄熟し、加工される過程でその毒性は低下し、下記のようなすぐれた効能があると言われています。
<疲労回復>梅干しに含まれるクエン酸が、疲労の元である乳酸を分解してくれます。また、脂肪を分解し、エネルギーに変換する働きもあるそう。肩こりに、梅干しを直接貼る方法も。
<消化促進>クエン酸・リンゴ酸・コハク酸・酒石酸が、胃腸の分泌力を高め、でんぷんの分解を助けてくれます。唾液の分泌を促し、消化促進に加え、虫歯予防に。
<整腸作用>腸の善玉菌によく、胃腸の動きを活発にしてくれるため、便秘を予防してくれます。腸がきれいになることで、美容にもよい影響が。
<抗酸化作用>酸性食品を多くとることで、酸性に傾く血液は、慢性病の原因になってしまいます。梅干しには、血液のpH値をpH7.4(弱アルカリ性)に保つ抗酸化作用があり、慢性病の予防になります。
<鎮痛・消炎効果>頭痛の時はこめかみに、歯痛の時は頬か歯に、梅干しを湿布のように直接貼ります。
<現代病予防>血管収縮性のあるホルモンの働きを抑えることにより、血圧の上昇を抑え、脳梗塞・心筋梗塞の予防になります。
<食中毒予防>優れた殺菌力で、菌の繁殖を抑えてくれます。お弁当に梅干しを入れることは、理にかなった知恵です。
ただし、これらの効能は、梅と自然塩だけという本来の材料で、天日干しを含む長期発酵を経た伝統的な作り方の梅干しに限ります。調味液に短時間漬けてつくる「調味梅漬け」「調味梅干し」は、別物と考える方がいいでしょう。
市販の梅干しを選ぶときには、安全な材料で、真摯な方法で作っておられる会社を選ぶことが、応援につながりますね。
さあ、梅の出回る季節、安心の材料を使って、手作りしてみませんか?
3 クエン酸たっぷり☆簡単梅シロップの作り方
こどもたちも一緒につくれて一緒に飲めるシロップはいかがでしょう。
水や炭酸水で割ってドリンクに。ドリンクを寒天でかためて梅ゼリーに。取り除いた梅の実は、ジャムにしたり、焼き菓子にまぜたり、料理に使ったり。
【材料】
・かご
・青梅 1kg ・お好みの糖(氷砂糖・砂糖・はちみつなど)1kg
【準備】
・瓶に、熱湯を回しかけて消毒し、乾かしておきます。
*瓶は、ガラス、ほうろう、陶器など、金属以外のものを。
【作り方】
①
©yanagihara
梅を採り、洗って乾かし、竹ぐしでヘタをとります。
*金属のくしを使わない。 *梅の実に傷がつかないように。
②
©yanagihara
瓶に、梅を並べ、上に氷砂糖を重ねます。この作業をくりかえし、最後は氷砂糖でおおいます。
*梅がおいしくなりたくなる「ことたま」を紙に書いて、瓶に貼るとたのしいですよ。
③
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毎日2回以上、瓶を大きく回し、シロップが梅にかかるようにします。
*発酵させないポイントは、梅のエキスをできるだけ早く抽出し、梅がエキスに浸かった状態にすること。
*氷砂糖よりも顆粒の砂糖の方が早く溶け、発酵しにくいそう。
④
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10日後ほどして砂糖が溶けたら梅を取り出し、鍋に移して70℃くらいで15分火を通したらできあがり。冷暗所か冷蔵庫保存。
*梅はジャム、菓子、料理に。
*鍋はほうろう、ガラス、陶器。金属は使わないように。
*殺菌することで発酵させない。
4 無添加☆梅干しの作り方
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青く未熟なうちに漬けると、アク抜きや重いおもしが必要となり、できあがりも皮が固くなったり。黄色くなるまでそのまま置いて「追熟(ついじゅく)」させると、プラムのように甘い香りが部屋いっぱいに広がり、やわらかい梅干しになります。塩分18%でつくる梅干しは、昔ながらのしょっぱい梅干し。失敗しにくく、長期常温保存できます。
【材料】
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・梅(有機無農薬/黄色く熟したもの)2kg ・塩360g(梅の18%) ・焼酎1/2カップ
【準備】
・かめに、熱湯を回しかけて乾かし、次に焼酎を回しかけて流します。
*かめは、陶器、ほうろう、ガラスなど、金属以外のものを。
*焼酎はボウルに取っておき、梅の消毒にも使う。
【作り方】
①
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梅を水洗いし、ざるに並べて乾かします。
*熟していればアク抜きしなくてよい。
②
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竹ぐしでヘタをとります。
*金属のくしを使わない。 *梅の実に傷がつかないように。
③
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かめにひとつかみの塩をふり、一段分の梅を焼酎のボウルに入れてから、かめに平らに並べ、上に塩をふります。この作業をくりかえし、最後は塩でおおいます。
*上にいくほど塩が多くなるように。
④
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熱湯消毒した皿、梅と同じ重さのおもしを乗せ、新聞紙で覆って冷暗所で保存します。
*おもしは、石、袋に入れた小石、水を入れたペットボトルなど。
*梅がおいしくなりたくなる「ことたま」を紙に書いて、かめに貼るとたのしいですよ。
⑤
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早ければ翌日から白梅酢があがりはじめ、4~5日後梅がすっかり浸かったら、おもしを半分以下に減らして、土用干しまで待ちましょう。
*赤くする場合は、塩もみしてアク抜きをした赤シソを乗せる。
*夏の土用は立秋の前の18日間で7/20頃~8/7頃
⑥
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およそ一か月後、晴天が4日続きそうな頃、梅をざるに広げて天日干しします。一日目、途中で梅を裏返してあげます。ざるについた皮が破れやすいので、やさしく。夕方に、室内に取り込み、一日目だけ梅酢に戻します。
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⑦
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2日目、3日目と干すうちに、ぷわのぷわの梅干しに。好みの干し上がりで、取り込み、熱湯消毒した容器で保管します。
残った梅酢も大切。清潔な瓶に保管します。
5 梅醤番茶
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湯のみに、梅干し1/3~半分、醤油1~3滴、しょうがひとかけのしぼり汁を入れてつぶし、熱い番茶を注いでまぜたらできあがりです。
うちは、乾燥しょうがパウダーを使っています。少し鼻が出る、のどが少し痛い、身体が少しだるい…そんな風邪のひきはじめに。日中と夜間、寒暖の差のあるこの季節にもぴったり。
6 まとめ
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梅についてもっと知りたくなった方は、ぜひ藤巻あつこ先生のご著書をご覧ください。一日ひとつの梅干しで、どうぞお元気にお過ごしください。
(参考:『梅干し・ウメ酒・うめ料理Q&A』藤巻あつこ著・日本大百科全書・JA紀南HP・公益財団法人日本中毒情報センターHP・Wikipedia)
「この時代に、この場所に生まれた、いま持っている心と身体で、この季節に、ここで手に入るものを、大切な人とまるごと味わう」をモットーに、簡単な英語表現を交えながら、四季の行事や暮らしの手作りを楽しむ教室「こども寺子屋」「おとな寺子屋」を主宰している。
ブログ:五感まるごと☆四季を愉しむ寺子屋だより -What a Wonderful Everyday Life in Japan!-